2011年5月29日(日)にオーラルケア主催のシンポジウムが東京で開催され、ペール・アクセルソン博士の講演会が予定されています。
ペール・アクセルソン博士は、およそ人類で最も歯科界に貢献した人物と目され、長年スウェーデンから世界に予防歯科臨床の発信、普及に携わり続けています。予防歯科を標榜する一般歯科医師、衛生士であれば誰もが知っている著名な先生です。
この講演会に麻生歯科クリニックと麻生キッズデンタルパーク(小児歯科)のスタッフは参加します。全員で勉強させていただくだけの価値のある臨床家のメッセージです。この講演は日本の歯科医療政策を考えるリーダーの先生方に是非聞いて欲しい内容だと思います。
なぜなら博士がヘルスセンターの所長をしていたスウェーデン、カールスタットという地域では博士の診療手法により、日本歯科医療界の悲願である8020は既に達成されているからに他なりません。
簡単に博士のご紹介をします。
アクセルソン博士は患者さんに良質のメインテナンスの提供を歯科医療の基本と位置づけし、う蝕や歯周病を発症させないための科学的な予防方法を歯科衛生士と共に確立してきました。自分の診療所のある地域だけでなくスウェーデンという国家レベルで臨床予防歯科を広め国民の口腔衛生状態を世界一にしたとされる人物です。専門家の間では、史上最も多くの歯を守ってきた歯科医師として高い評価を得ています。
なぜ多くの歯科衛生士が、『メインテナンスを続けることで歯の健康を守ることができる』と確信し自信をもって患者さんや各地域に広めているかというと、博士が30年間メインテナンスを継続し長期モニターした結果、97.7%の確立で歯が守られ、残されていることが文献で発表され世界中でその医療方法が大変価値のあるものと認められている事実があるからです。
しかし、その予防法は患者さん全員に同じことをしても効果がありません。個人によって虫歯や歯周病のかかりやすさはそれぞれ違うため、各々にあった予防方法を提案し、一定のお口の病気にかかる確率(=リスク)を予測しながら実践しなければなりません。それに継続して来院してもらうには患者さんの意識を、より高いところにもっていかなければなりません。
実践する予防方法とは科学的な予測に基づく手際の良いセルフケアや、担当衛生士による専門的クリーニングをアレンジし患者さんに提供することが必要です。そのためには、患者さんの病気にかかりやすさや傾向を知って分析する能力を養成し、個別に対応することが求められます。いわゆる専門的リスク管理です。
アクセルソン博士の30年に及ぶ長期の患者さんの口腔内のメインテナンスから読み取れる問題を解決するために臨床で検証して成果をあげてこられたことが医学書となって世界で出版されています。現在6巻まであり、うち1巻と2巻は日本語に翻訳されています。
1、2巻はリスクに応じた予防歯科学 入門編と齲蝕診断編です。
3巻 リスクに応じた臨床歯周病学の診断
4巻 予防歯科のプログラム立案から方法論
5巻 歯周病の臨床的コントロール その低侵襲療法について
6巻 う蝕と酸蝕症 トゥースウエアのコントロール その低侵襲療法について
当院では、翻訳に苦闘しながら勉強させていただいています。
私たちはアクセルソン博士が人生をかけて実践してきた予防歯科臨床から学ぶことが使命だと思っています。そして博士の考え方や予防歯科が持つ普遍的価値を、郷土であり日本の片田舎の地方都市、静岡市にある麻生歯科クリニックでも、ごく普通に継承させていただき、諸外国と同様な診療が受けられるようにしています。
同時に6月のスウェーデン マルメ大学海外研修を一同心待ちにしています。
院長 麻生 幸男
歯科衛生士 榎本 真里恵